米国株投資アプリ「Woodstock」を運営するWoodstock株式会社は、2025年10月にスマートフォンのマイナンバーカード(カード代替電磁的記録)を用いた口座開設の本人確認に対応したとPR TIMESで発表しました。完了率や所要時間の比較が示される一方、対象端末や集計条件など、読み手が確認しておきたい前提もあります。
口座開設の手続きで離脱が起きやすい工程の一つが本人確認です。Woodstock株式会社(東京都港区)はPR TIMESで、スマートフォン上のマイナンバーカード情報を活用する方式を2025年10月に導入したと発表し、導入後の統計として完了率や所要時間(中央値)も公表しました。本稿では、(1)制度・事例を整理する公的情報、(2)企業発表として示された数字、(3)読者が誤解しやすい前提条件、の順で整理します。
■背景:民間での「マイナンバーカード活用」をめぐる情報整理
デジタル庁は、民間事業者向けにマイナンバーカードに関連する情報をまとめたページ(「マイナンバーカード・インフォ(民間事業者向け情報)」)を公開しています。こうした公的な整理が進むほど、各社がどのような方式で本人確認に取り組み、どの指標で効果を示すのかが比較されやすくなります。
■話題1:Woodstockが「スマホのマイナンバーカード」口座開設に対応
Woodstock株式会社は、米国株投資アプリ「Woodstock」を運営していると説明しています。同社はPR TIMESで、2025年10月に「スマホのマイナンバーカードを活用した口座開設」に対応したと発表しました。方式については「カード代替電磁的記録を読み取る方式」としています。

ここで注意したいのは対象範囲です。発表文には「Android端末は除く」と明記されています。つまり、スマートフォンで完結する本人確認の体験は、少なくとも発表時点ではiPhone側に偏る可能性があります(対象外となる理由の説明は、公開範囲では確認できません)。
また同社は、本人確認の選択肢として「スマホのマイナンバーカードによる本人確認」と、顔写真撮影による「公的個人認証サービス(JPKI)方式」の両方を提供しているとしています。新方式の導入が、従来方式を完全に置き換える設計なのか、併存させる設計なのかで、利用者の選択や離脱の出方は変わり得るため、この「併用」が読み解きの前提になります。

■話題2:導入後データとして示された「完了率」「所要時間」「利用の広がり」
同社は、カード代替電磁的記録方式の導入から「約4か月」が経過したタイミングで、過去30日のデータを分析した結果を公開したとしています。
発表された主な数字は次の通りです。
・本人確認完了率:スマホのマイナンバー方式は、従来のJPKI方式と比べて「約70%向上」したと報告
・所要時間(中央値):スマホのマイナンバー方式が2分40秒、従来のJPKI方式が5分50秒と記載
・iPhone利用者の登録率推移:口座開設申請者のうち、iPhone利用者でマイナンバーカードを登録している割合が、導入初期の約18%から現在は約40%近くまで増加したと記載
・選択傾向:口座開設時にスマホのマイナンバーによる本人確認を選択するユーザーの割合が、従来のJPKI方式を上回っていると記載

また同社は、成果データをデジタル庁と共有し、スマホのマイナンバーカードを活用した本人確認の有効性について意見交換を行っているとしています。
■読み解きの注意点:数字が示す範囲と、示していない範囲
一連の発表は「比較の数字」が中心ですが、読者が一般化しすぎないために、未開示の前提を押さえておく必要があります。

1)完了率は「相対改善」で、絶対値は示されていません
「約70%向上」は相対的な改善として記載されています。一方で、従来方式と新方式それぞれの完了率(何%から何%へ)といった絶対値は、公開情報からは確認できません。相対改善だけでは、到達水準の高さ(もともと高かったのか/低かったのか)までは判断できません。
2)「過去30日」の具体的な期間と母数が不明です
分析期間は「過去30日」とされていますが、開始日・終了日、申請件数などの母数、属性(年齢・地域など)の内訳は読み取れません。サンプルの大きさや構成が分からない場合、数値のブレや偏りの可能性も含めて受け止める必要があります。
3)中央値の「所要時間」がどこからどこまでかは不明です
中央値(2分40秒、5分50秒)という指標は、外れ値の影響を受けにくい一方で、計測区間(例:画面開始から完了まで、入力時間を含むか、通信待ちを含むか)が分からないと比較の意味合いが変わります。ここは読み手が誤解しやすい点です。
4)端末条件の違いが、体験差として数字に影響する可能性があります
Android端末が対象外である以上、現時点の結果はiPhone利用者中心の体験を強く反映する可能性があります。端末の利用状況はユーザー層とも結びつきやすいため、同じ方式でも母集団が変われば結果の見え方が変わり得ます。
5)「」は自社調べです
同社は「証券業界において日本初」と記載し、注記として自社調べ(2025年10月27日時点)であるとしています。外部機関による検証の有無は、公開情報からは確認できません。
■補足:発表文に含まれる案内の扱い
PR TIMESの発表にはアプリのダウンロード案内(リンク)も掲載されていますが、これは企業発表に付随する案内です。本稿では、数値や条件など、読み解きに必要な情報を中心に整理しています。
今回の発表は、本人確認の新しい実装として「スマホのマイナンバーカード(カード代替電磁的記録)」を採り入れた点と、完了率・所要時間といった指標を比較の形で示した点が要点です。一方で、対象端末(Android除外)や、完了率の絶対値・母数・測定方法などは明らかでないため、数字は「条件付きの結果」として受け止めるのが安全です。読者としては、今後同種の事例を比べる際に、対象範囲、比較条件、指標の定義がそろっているかを確認することが判断材料になります。
出典
- 原題:証券のスマホマイナンバー口座開設導入で成果 | Woodstock株式会社のプレスリリース
- URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000092154.html